僕のオタク・サブカル思い出(32)

  沖縄の同人サークルNEXTは、女性が8割を占めていた当時のサークル参加者の中でも異彩を放つ「男性のサークル」かつ「出るときは確実に新刊があるサークル」でした。特に後者って、便せん等のグッズを置いてたりペーパーを置いてたりが普通だった中で実は意外に少ないんですよね。
 そのNEXTに、96年あたりから新しいメンバーとして「サガヲ」さんが加わりました。経緯は僕も詳しくないんですが、独特の絵のセンスと不思議な語り口に加え、ゲームのプログラムが書けるという点が当時的には稀有な存在でした。

 97年に達名が閉店したのち、NEXTは某所に「NEXT秘密基地」なる拠点を立て、そこに機材を持ち込みゲーム開発を始めます。
 秘密基地はNEXTメンバー以外は基本的に立ち入りに許可が必要で、初期の頃は気軽に「行っていい?」って言えるほどの立ち位置ではなかったので、中の様子の詳しいところまでは把握していません。ただ数回訪れたことはあり、だだっ広いポンリュームの部屋に段ボールやビニールゴザが敷かれ、そこに数台のタワー型DOS/Vマシンが並んでました。僕が行った日は98年のお正月で寒い時期だったのでメンバーがPCの裏に回ってファンで暖を取ってたのはよく覚えてます。なんか文章だけで説明するとアメリカ人がガレージで起業するみたいな話だ。

 NEXTのウェブサイト上で、サガヲさんはミニゲームを定期的に作っては発表していました。四方八方からやってくる敵弾を避けるだけのシュールなゲーム「戦場の娘」や今でもファンの多いスト3のブロッキングの練習のために作られたゲーム「OQR」など、独特のビジュアルとマイクで直接吹きこんだBGMがクセになる面白さで、じわじわと人気を得ていきました。その裏で、のちに代表作となる横スクロールシューティングゲーム「ウィザーズスター」の開発が進んでいました。構想自体は96年末くらいからは始まっていたと思います(その頃にマエカワさんに主人公の原案を見せてもらった)
 ウィザーズスターは1と2(正確には無印版と2nd)があって、1の方は後日ウェブサイトの方で公開されたんだったかな。その際の開発現場には僕は殆ど立ち合えていなくて、目撃したのはほぼ完成しているバージョンで、ハムスターからとんでもない量の弾幕が放たれているシーンで大興奮してましたねー。

 2の開発が始まった頃に秘密基地が移転し、その頃には僕も運転免許を取得していたので、結構頻繁に秘密基地へと通うようになっていました。相変わらず部屋の中にひしめき合う開発機材、本棚の一列を埋めつくすジョジョの奇妙な冒険(当初はところどころ歯抜けになってたのでメンバーが古本屋で買ってきて全巻埋めていた)、そして当然のように置かれているアーケード筐体(あれジャレコのやつだっけ?)などなど、オタクの夢みたいな場所になってました。
 僕もコンビニバイトを始めて、夕方から12時までのバイトをやったあと、当時は普通に持って帰ることができた期限切れの弁当やらおつまみやらをごっそり貰っては秘密基地に持ち込んでみんなで食べたり、ドリームキャストで発売された「ソウルキャリバー」を本体+レバー2本ごと買って持ち込んで12時間連続プレイ×2日とかやって眼精疲労でとんでもない頭痛に襲われたりしてました。
 そんな感じで入り浸ってたんで、なんやかんやで僕は2の開発にちょっとだけ関わることになり、最終ステージの道中のBGMとステージ4だったかのボスの声、あとステージ1のキャラクターのドット打ちをやったりしました。そのステージ1のボスの声を担当した人が現在の僕の妻なんですが、それはまた後のお話。

 サガヲさんとは僕の家で余ってたテレビを持ちこんで縦置きにしサターンの「怒首領蜂」を「このへん実機と違うよね」とか色々言いつつ攻略したり、当時テレビで再放送してたドラマ「スクールウォーズ」をみんなで見て「イソップぅー!!と絶叫するサガヲさんにみんなで爆笑したりしてましたね。
 すげえなと思ったのは、数日おきに遊びに行くたびにサガヲさんがミニゲームやウィザーズスターの新しい要素を作っては試している様子でしたね。来兎さん、マエカワさん、サガヲさんの3人が中心になってあれやこれやと意見を出しつつ、一回方向性が決まるとサガヲさんはとにかく作業が早くて、特にウィザーズスターの使用キャラのひとつ「ストラップ」はギリギリまで自機の仕様が固まらず、週に1回攻撃方法が変わってて「これどう思う?」と意見を求められてました。結局、実装から5~6回仕様が変わって初期の面影が全くない攻撃方法になってましたね。

 晴れて2が完成しコミケでの頒布も大成功。そこからすこし間を置いて、サガヲさんが就職のため東京に旅立つことになり、あんな面白い物作れる人なんだから向こうでも頑張れるぞー!とみんなで送り出したあと、役目を終えた秘密基地も閉鎖が決定。不用品の運び出しをお手伝いしながら「色々あったねえ」としんみりしたあの日。ログを読むと2000年5月末の事だそうな。この時期の僕はパソコンショップでバイトをしていて、新しい生活に慣れるのに必死っていう時期でしたね。
 僕にとっては、達名が閉店した後もそのノリでみんなと遊んでいたので、この秘密基地の閉鎖が高校生から続く青春時代の終わりの方っていうイメージです。ホントに遊んでばっかだったな。楽しかったな。
 その年の8月に、サガヲさんは帰らぬ人となりました。つい最近まで一緒に居た人のあまりにも突然の訃報に、サガヲさんと交流のあった誰もが深い悲しみに暮れた夏でした。いくらなんでも早すぎますよサガヲさん。

 そこから19年後。40代にさしかかった僕はなんとなく「そろそろ新しいこと覚えたいなあ」という謎の衝動からJavaScriptを触り始めましたが、その準備のためにPCのストレージを整理していたら、秘密基地でサガヲさんから貰っていたOQRの画像と音声のデータが偶然見つかりました。一応当時のプログラムも出てきたんですが、バイナリなのでソースコードは見れません(というか当時はCを全く読めなかった)
 そんなわけで「せっかく素材があるんだから、JavaScriptのゲームライブラリを利用して復活させてみるか!」と、いろんな人の教えを請いつつ勢いだけでJS版を制作してみました。さすがに完全コピーとはいかなかったけどふつうに遊べるようになってますので、サガヲさんの面白さを是非この機会に体験してみてください。ヘッドフォン推奨!

 Obakeno Q-taro Revolution (Recompile)

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