超個人的・FLStudio/Reason比較

 まあこんなの比較するのもどうなの?と言われかねない内容なんですが、作曲環境を整える際に「お手軽に買えてすぐに曲作りができる初心者向けソフト」という点では競合する部分も多かろうと思いますので、「テクノ作りたいんだけどどっち選べばいいの?」という大変ニッチなお悩みに応える記事です。
 これから年末年始にかけて、サイバーマンデーとか年末セールなんかで何かとお安く買えるタイミングでしょうし、せっかくなのでこの機会に導入を検討してみては?

・購入までの流れ

今回紹介する二つのソフト、嬉しいのは「ダウンロードで買えるので即使える」というところ。双方とも公式サイトから購入できるので、思い立ったら即環境構築が可能なのです。

 →FLStudioの購入ページはこちら

FLStudioは299$(Signature Edition)、一度購入すると以降のメジャーアップデートも無償で行えるライフタイムフリーアップデート制度があるので、長期的に見るとFLStudioはかなりお得です。  FLStudioはエディションが4つあって、2万円程度でとりあえず曲作りには困らないProducerEditionでもそれほど問題ないんですが、FLStudio特有の音作りを考えるとSignatureEditionを最初で購入しておくのが一番コストパフォーマンスが高いと思います。全プラグイン必要ってことも少ないだろうし。

 →Propellerhead Reason9購入ページはこちら

さて対するReasonの方はというと、基本セットが399$とFLStudioと比較すると若干お高めとなっています。公式サイトの方ではこれに加えて、ラックエクステンション(独自フォーマットによる追加モジュール。ReasonはVST使えないんだよね・・・。)詰め合わせセットなんかもありますが、こちらも元々のモジュールがとても優秀なので実際それほど困ることはありません。なおReasonはメジャーアップデートは別途料金となります。 あと、近年ダウンロード版がリリースされたことで、これまで起動するのに必要だったドングル(正規購入者であることをソフトに認識させるためにUSB端子等に挿し込んでおかなければいけないハードウェアキー)が無くなってオンライン認証になったのはありがたいですね。 どちらのソフトも、備え付けのシンセに素材にパッチが山ほどくっついてきますので、購入からしばらくは曲作りに困ることは少ないかと思います。初期投資のみでそれなりの音が出せるって、いい時代になったもんですな。

・それぞれの特徴と長所短所

FLstudio

FLStudioは元々FluityLoopsというとても簡素なシーケンサーが元になっていて、現在のバージョンでも当時の入力方法が残されたままになっていますが、一般的なDAWっぽい環境がメインに据えられているので使い心地に問題なし。曲の部品となるパターンを作り、それを並べて曲を構築するスタイルが基本です。  DAW界隈でのスタンダードフォーマットであるVSTプラグインも導入可能なので拡張性も高いです。VSTは無償のものでも結構面白いエフェクターやシンセが転がっているので、お気に入りのプラグインを漁る楽しみもありますね。
 FLStudioの特徴としてよく語られるのは「安価のわりに太い低音が出しやすいのでクラブミュージック向き」みたいなところ。いやまあ音質で比較したら値段相応なんですけど、結構低音がきっちり詰まって出てくるのでキックの音も気持ちいいです。操作系統もループが多用される音楽だと操作が楽なように作られてるので、ダンスミュージック向けと言い切ってもいいのかなと。
 バンドルされるシンセなどは結構お役立ちのものが多くて、たとえばソフトウェアシンセのSytrusは単体でも面白い音が出るし、コンプレッサー・リミッターのMaximusとその簡易版のSoundGoodizerは調整次第でめちゃくちゃズ太い音が飛び出します。僕がよく使ってるのはSliceXというループスライサーですね。
  ただ、これもよく語られるところなんですが、わりと止まりやすく挙動が不安定です。CPUへの負担も大きいので、気持ちよく作業するならスペック高めなデスクトップ環境がおすすめですね。デュアルモニタで作業できるととっても作業が楽になります。

Reason

 一方Reasonですが、各楽器ごとにパターンを作り並べていくスタイルで、個人的な印象ですが痒いところに手が届く作りになっていて作業が非常にスピーディーに行えます。コピペの挙動とかは僕はこっちの方が好みかなあ。
  先述したとおり、Reasonは元々拡張性が殆ど無く(一応、TB-303等のエミュレーターであるReBirthをラックマウントできるようになってた程度)、それ故にとてもPCに対する負担が軽く安定した動作でした・・・が、VSTの替わりとして装備された拡張技術ラックエクステンションの導入によるところもあるのか、さすがに現行バージョンでは結構動作が重かったりします。エフェクターをひとつのシンセに5個もつなげると、たまーに「重すぎて再生できないんですけど!」と怒られるようになりました。まあそれでもFLと比べるとかなり安定してますけどね、フリーズして作業が進められない!ってことは稀ですし。
 Reasonは他のDAWとかなり勝手が違う部分が多いんですが、たとえば各モジュールはすべて本物のラックマウントシンセのようにラックに収めるようなビジュアルになること、そして各モジュールを実際にケーブルで繋いでルーティングできるというのがとてもユニークなところ。これ、見た目に面白いってこと以上にルーティングがかなり自由に行えるという点でも結構便利です。少し専門的な話になりますが、ルーティングが音だけでなくCVも扱えるという点もかなりポイント高いですよ。使い込むほどに面白い音が作れるようになるのがReasonのいいところですね。

 双方とも、さすがにCubaseクラスより上のDAWと比べると音質は若干劣る部分はあります。とはいえ音質重視のこだわり派でないならあまり気にならないかもしれません。特にReasonはバージョンを重ねるごとに音質が向上していて、以前のように立体感の無い音にされることは無くなりました。あとクラブミュージックに限って言えばFLStudioの太い低音はオイシイんじゃないでしょうか。


・ボカロ曲を作るとき

この手のソフトウェアの最近の用途って「ボカロ曲を作る」だと思うんですけど、まずFLStudioはマシンスペックが高ければ、クリプトン製ボカロにバンドルされてるPIAPRO StudioをVSTとして呼び出してボーカルを同時に編集できるようです(うちの環境だとかなり動作重いので使ってないけど) もちろんレンダリング後のwavを直接貼り付けることもできますよ。  Reasonは以前ReWireでVOCALOID Editorと連動できるようになってましたが、V3エンジンになってからあたりで連動機能が削除されてしまいましたorz そんなわけでReasonでボカロ曲を作るときはまずwavをレンダリングしてReasonに貼り付けるという方法を採ります。  7以降のReasonはwavファイルを直接貼り付けることができるようになったのと、最新のReason9ではピッチシフト機能が付いて、ある程度ならピッチ補正ができるだけでなく、不安定な音程にはなるものの思いっきりピッチチェンジできるようなったのは心強いですね。

・で、結局どっちがいいの?

比較しておいてナンですが、正直どっち使っても後悔はしないだろうなーってくらい使いやすいし面白い音が出せます。敢えて差別化するなら、ハイスペックなPCをお持ちであればFLStudio、ノートPCなどやや抑えめなスペックのPCならReasonがオススメということでしょうか。  ごく個人的な意見としては、Reasonの方が何もない状態から曲を作るまでのストロークが短くなるんじゃないかなと思ってます。インターフェースも扱いやすいし見た目も直観的なのでとっつきやすさではReasonに軍配が上がるかなと。  ただ、長期的に見ればFLStudioの方がとても汎用性があって捨てがたいところですね。やはりVSTが導入できるっていうのはとても強い。出音もパンチがあるので使ってて楽しくなるのは間違いないです。

・余談:その他のDAWは?

VOCALOID EditorがCubaseと親和性高い(For Cubaseみたいなのもありますし)ということでCubaseユーザーも多いと思うんですけど、個人的にはCubaseは難解でちょっと手が出しづらいんですよねえ・・・最初に揃えておかないといけないものも多くなるので、本気で曲作りをしまくるぜ!と燃えるようになったら導入を検討するってことでいいと思ってます。  Liveはシーケンサー導入されて以降のは殆ど触ってないのでなんとも。でも結構使いやすかった印象があるのと、DJやライブ用にってことで重宝されてる方も多いかと思いますので情報共有はしやすくていいかもですね。  逆にDAW以外で曲作りだと、僕は今でもMODトラッカーを使用していますが、多機能なトラッカーも結構あって、Renoiseはかなり本格的なつくりになってて面白かったですね。MODPlugTrackerで扱いに慣れてからそっちに移行するという手もアリかと思います。MPTは無料で使えるし、Renoiseもかなり安価でイイですよ。